日本周遊紀行;温泉と観光(21)「濤沸湖、小清水花園」
「小清水花園」、左に知床、右に斜里岳が遠望できる
網走市街から東方の外れに網走港が広がっている、国道244号線はその網走港に沿って延びている。 流氷祭りの会場や流氷観測船「オーロラ号」の岸壁を遠目に見ながら、海岸伝いを行く。
途中、濤沸湖(とうふつこ)の北浜の「白鳥公園」へ寄ってみた。 むろん時期外れで白鳥・渡り鳥は来ていない。
湖面は、微風を感じながら小波程度で、寂閑としている。
先年訪れた時は物凄い数のオオハクチョウをはじめ、多くの野鳥の群れにビックリ仰天したものであり、餌をやりながら大いに楽しんだのだ。
濤沸湖はアイヌ語で「チカンプトウ」と呼ばれ、「鳥がいつもいる湖」という意味であり、こちらも汽水湖・海跡湖の一つである。
やがて冬になると、厳寒のシベリアの冬を避け、毎年2,000羽のオオハクチョウが飛来し、この湖で羽を休める。
名前の由来どおり四季を通じて数多くの野鳥が訪れるところである。12月までここで羽を休めた後、越冬地の宮城・新潟へ向けて飛び立っていき、また3月に濤沸湖に舞い戻り、やがてシベリアへ向けて飛び立つのは4月下旬から5月上旬だという。
ところで、野鳥を保護するための世界的組織があるという。
IBA (Important Bird Area)といって「重要野鳥生息地」を意味する。 絶滅危惧種をはじめ、野鳥の生息に重要な地帯を保全する目的で、その場所を指定するための組織である。
IBAは、国際的野鳥保護組織(BirdLife International)による事業であり、世界各国の保護組織と連携しながら実施している。
IBA指定の基準は以下の通り。
● 世界的な絶滅危惧種の生息地
● 世界規模で生息地が限定している固有種の生息地
● 大規模な野鳥の生息地もしくは渡り鳥の中継地・越冬地、また世界的重要な森林など
無論、ラムサール条約(※)に登録されている湿地等の箇所は全て含まれ、その他にも山、川、島など絶滅危惧種と思われる野鳥を主体に、重要野鳥生息地を指定している。
日本では、「日本野鳥の会」などが主体となって活動しているようであり、北海道ではラムサール条約指定地のほかに利尻、天売島、大雪山、日高連峰など31ヶ所が指定されている。
※「ラムサール条約」とは、湿原の保存に関する国際条約で、水鳥を食物連鎖の頂点としながら、湿地とその生態系を守る目的で制定されたもの。
イランの首都テヘランの北、カスピ海の近くに「ラムサール」という町があり、1971年にこの地で制定されたことからその名が付いた。
日本語での正式名称は特に「水鳥の生息地としての重要な湿地」に関する条約である。
因みに、北海道では当地・濤沸湖をはじめ釧路湿原、霧多布湿原、クッチャロ湖など12ヶ所となっている。
尚、この濤沸湖は、昭和32年に派遣された第1回南極観測探検隊の一行が、結氷を利用した予備訓練(耐寒訓練)を行なった地でもある。
その海跡湖である濤沸湖を形造った砂丘海岸の狭い地域沿いに国道は走っている。
幅の狭い陸地のすぐ横を「釧網本線」(せんもうほんせん)も通っていて、間もなく砂丘の代表的景観である小清水の原生花園に来た。
その名も「小清水原生花園」といい、やはり濤沸湖とオホーツク海に挟まれた細い区間に位置している。
釧網本線・原生花園駅
細長い駐車場と細長い建屋があって、その中に土産店や軽飲食店がならんでいる。
すぐ横の踏み切りを渡った処に小屋風の瀟洒な駅舎がある、駅名はその名も「原生花園駅」という。
出入口に駅長さん用の制服・制帽が掛けてあった。
何のことはないこの制服は観光客用のレンタル品(当然無料)で、これを着用して記念写真(マイカメラ)に応じてくれるとか。
丘の上の展望は雄大である。
散策路のうち一番高い展望広場・、とは言っても僅か数mにすぎないが、周囲になにもないので眺めが届く範囲はかなり広い。
濤沸湖のワイドな風景、オホーツク海に浮かぶ知床半島と羅臼連山、また斜里岳(1545m)の弧峰もよい、転じて能取岬は間近である。
この小高い展望地を「天覧ケ丘」ともいう。
昭和29年に天皇陛下(昭和天皇)が立ち寄られ、その記念の歌碑が建てられている。この地の様子を翌年新春歌会で詠まれたものである。
『 みつうみの おもにうつりて をくさはむ
牛のすかたの うこくともなし 』
オホーツク海で造られた砂丘は、幅が200m足らずだが東西20kmの長大さである。
散策路の奥からは、砂浜の海岸へ出られ左右に海岸線が延びていて気持ちがいい。
この帯状の起伏の面も、春になると北国特有の花園が展開する。 いまはハマナスの紅色が処々に季節を惜しんでのみである。
尚、世界遺産・「知床」は、東日本・後編にて記載してます。
次回は、野付半島
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