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日本周遊紀行(167) 九州山地 「椎葉村」 .
次に、日向・宮崎の山村で椎葉、米良、南郷地方について・・、
「椎葉」は、九州山地の中央部の山襞深く、県境、五家荘や五木村に接する日向の最奥部に位置し、共に平家の落人伝説を秘めた地である。
昔から人跡まれな秘境として知られ、俗に「推葉千軒」という一郡にも匹敵する広い面積の士地に、わずかな人家が散在していたのである。
昭和30年に、我国初のアーチ式ダムである上椎葉ダムができるまでは、車も行けない秘境であったらしく、今は自動車で行けるが、けっして道は広くなく山また山を超えて細い道を行くことになる。
もともと日向・椎葉は、中央から離れ、陸の孤島とされた内陸の流刑地として、有名無名の罪人がこの地に遠流された地でもあったという。
1185年、源平の壇ノ浦の戦いに敗れた平家の残党は、全国各地へと落ち延びるが、ある一行は険しい山を越え、熊本の阿蘇路を経て九州山脈の最も奥深い椎葉へと辿り着き、かくれ住んだという。
だが、この山地も鎌倉幕府の知るところとなり、追手が迫ることになる。
源氏の棟梁・源頼朝より追討の命を受けたのは「扇の的射」で有名な那須与一宗高であった。
ところが、与一自身は病の床に伏していたので、弟の那須大八郎宗久が軍勢を率いてこの椎葉を目指すことになる。
険しい道を越え、やっとのことで隠れ住んでいた落人を発見するが、そこで大八郎が目にしたものは、かつての栄華もよそに、ひっそりと農耕をしながら平和に暮す農民達であった。
大八郎は哀れに思い「椎葉の平家の残党は一人残らず討ち果たした・・、」と幕府に嘘の報告する。
その後、大八郎はこの地に屋敷を構え、この場所で生活することを決め、やがて、平清盛の末裔とされる「鶴富姫」と出会い、二人の間にロマンスが芽生える。
そして姫の屋敷の山椒の木に鈴をかけ、その音の合図に逢瀬を重ねる。
そんな中、幕府から、「すぐに兵をまとめて帰れ」との命が届き、仇敵平家の姫を連れて帰るわけにもいかず、大八郎は一人で帰ることにした。
この時既に、鶴富姫は身ごもっており、大八郎は「生まれた子が男子ならば我が故郷下野の国へつかわせ、女ならこの地で育てよ」と言い残し椎葉を発つ。
この大八郎と鶴富の運命的な逢瀬の時に生まれたのが、全国的にも有名な「ひえつき節」であったという。
『ひえつき節』 宮崎民謡
庭の山椒(さんしゅう)の木 鳴る鈴かけて
ヨーオー ホイ(以下、おなじ)
鈴の鳴る時ゃ 出ておじゃれヨー
鈴の鳴る時ゃ 何と言うて出ましょ
駒に水くりょと 言うて出ましょヨー
おまや平家の 公達(きんだち)流れ
おまや追討の 那須の末ヨー
那須の大八 鶴富捨てて(おいて)
椎葉たつ時ゃ 目に涙ヨー
恋の別れの 那須大八が
鶴富捨てて 目に涙ヨー
泣いて待つより 野に出て見やれ
野には野菊の 花盛りヨ
以上、那須の大八と鶴富姫の下りだが、歌詞は、まだまだ続くという。
椎葉村は、標高千メートル近い山の斜面を切り開いて、雑木や雑草を焼き、残った灰を肥料としてソバやヒエが作られてきた。
有名な「ひえつき節」は、このような生活の中から生まれた椎葉を代表する民謡で、焼畑によって収穫されたヒエを木臼に入れて杵でつくときに歌われる労作業歌でもある。
平家の鶴富姫と源氏の武将・那須大八郎の平家落人にまつわる伝説は、今も残っており、鶴富姫が住んでいたといわれる豪壮な屋敷も存在する。
その屋敷は平安期の寝殿造りで、建築様式から約300年前の建立と云われ、昭和31年国の重要文化財となっている。
毎年11月の初旬の3日間「椎葉平家まつり」が行われ、祭りのハイライトは大和絵巻武者行列で十二単の平家方の鶴富姫と源氏方の那須大八郎が、よろい姿の騎兵と一緒に町中を練り歩くという。
次回は、「南郷、米良」
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