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日本周遊紀行(15)清水 「三保の松原」
「三保の松原」は駿河湾を挟んで白砂青松と紺碧の空に、白い雪を被った富士山が望まれる景勝の地。
清水の街から国道149で三保の分岐へ出る。 そして羽衣伝説の「三保の松原」へ向かった。
案内に従って進むと「御穂神社」が在った。 緑に囲まれた静寂の地に立派な拝殿、本殿が鎮座している。
御穂神社は大国主命が姫(三穂津姫命)と羽車に乗り、東方へ新婚旅行に来た際、景勝の地で海陸の要衛でもある三保の浦に降臨して、我が国土の隆昌と皇室の繁栄とを守るため、三保の森に鎮座されたのが起こりという。
三保は歴史的には、日本書記にある『白村江の戦い』(はくすきのえのたたかい:663年)に古代・清水から出兵した「庵原の君」の根拠地としての伝承もある。
7世紀頃の東海地方は、相武(さがむ)の国、師長(しなが)の国、朱流河(するが)の国、蘆原(よはら;後に庵原の国となる)の国があり、其々が合併して相模国、駿河国ができたといわれる。
この庵原の君とは、この蘆原国の国造(くにのみやつこ:国守)ではないかとされている。
又この地は、戦国時代以降は武将の戦略の拠点として今川氏や武田信玄、徳川家康も海上交通の拠点としていた地である。
そして古代より御穂神社は海の守り神、海の神として尊崇されていたという。
一般民衆よりも三保大明神として親しまれ、両神(三穂津彦命・大国主命)は国土開発の神様であり、又、二神は夫婦和合の縁結び、航海安全、農漁業、文学や歌舞・音曲の神としても仰がれている。
神社正面より海岸へ向かって、松樹の道が整然と延びている。 この道は「神の道」と称している。 きっと、両神がお渡りになった道なのだろう。
年代嵩む「羽衣の松」;近年、世代交代が行われるらしい)
(追記;2010年10月、羽衣の松が数世紀ぶりに世代交代を行う。詳しくは下記静岡市観光課H・Pへ)
静岡市観光課:http://www.city.shizuoka.jp/deps/kanko/hagoromo.html
付近を近所のオバサン達が清掃に励んでいた・・、
「 羽衣の松はこちらでよろしいのですか・・? 」
「はい・・、車を置いた、すぐ先にありますよ・・」
整備された緩やかな階段を行くと、品のいい松の林が広がっていた。
気が付くと、処所で中年の女性たちが、熱心にキャンパスに筆を入れていた。 そして「羽衣の松」は、海岸近くに柵に囲まれて堂々と貫禄充分で有った。 だが650年という歳月を背負ってか、幾分、老衰気味であったのがやや気掛かりである。 ベテランの樹医の下で、充分な生気を取り戻して欲しいものである。
三保の「羽衣伝説」
『昔々、三保の村に伯梁という漁師がおりました。ある日のこと、伯梁が松の枝にかかっている美しい衣を見つけて持ち帰ろうとすると、天女が現れて言いました。「それは天人の羽衣です。どうかお返しください。」ところが伯梁は大喜びして返す気配を見せません。すると天女は「その羽衣がないと天に帰ることができません」と言って泣き出しました。伯梁は天上の舞を見ることを条件に羽衣を返しました。天女は喜んで三保の春景色の中、羽衣をまとって舞を披露。やがて空高く天に昇っていきました。 』
御穂神社には、羽衣の切れ端が今も保存されているという。
又、「天の羽衣伝説」は三保の松原以外の各所にも残っている。
余呉湖(よごこ:滋賀県北部、伊香郡余呉町および木之本町にある湖で、「よごのうみ」とも読む。日本最古とされる羽衣伝説の地として知られる)や京都峰山(近江国風土記・京都府京丹後市峰山町のものは丹後国風土記に見られる)、千葉・佐倉等でもあるようだ。
中でも佐倉の天女伝説 は、『 平将門が佐倉の「おもが池」に赴いたとき、一人の天女が羽衣を脱いで遊んでいた。将門は羽衣を奪い取り、天女を連れ帰って契りを結び、三人の子を生ませた。その後、天女は羽衣を取り戻し、子供を置いて天に帰っていった。 しかし、さすがに子を思う情は尽きず、三通の便りを送ってきた。その時、月の石(千葉石:隕石とも言われる)に便りを結びつけて、天から降らしたという 』
大正時代に選定された新日本三景には、大沼国定公園の「大沼と駒ヶ岳」、耶馬・日田・英彦山国定公園の「耶馬渓」、そしてもう一箇所が冨士を背景にした「三保の松原」が選ばれている。
それと「三保の松原」は福井県敦賀市の景勝地・「気比松原」 (けひのまつばら)そして「虹の松原」(佐賀県唐津市の唐津湾)と共に日本三大松原の一つでもある。
駿河湾を挟んで白砂青松と紺碧の空に白い雪を被った富士山が望まれる景勝の地、其れに羽衣伝説も加わっての「三保の松原」は古今、伝承と名勝の地である。
次回は「駿府(静岡)と家康」
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