日本周遊紀行;温泉と観光(31)大畑 「薬研温泉」
薬研温泉の野天・「かっぱの湯」はご機嫌であった・・、
大畑海岸の小さな漁港の一角で目が覚めた、空はドンよりと垂れ込めている。
出航の準備か、漁民の二人(夫婦・・?)が忙しなく動きまわっていた。
こちらは、今目覚めたばっかりのボンヤリ頭で、前の御二人の様子とは好対照、何か気まずい思いがする、早々に退散としよう。
先ずは内陸部の薬研温泉(やげんおんせん)へ向かうことにする。
「薬研温泉と恐山」は今回の旅の主要地でもあった。
未だ静寂の大畑町並みを抜け、国道279へ出て、薬研方面の分岐、県道4を行く。
途中、町並みを通過する時、鉄道の駅舎らしい建物に遭遇した。
それは駅名ではなく「下北交通大畑出張所」とあった。
ここは元々JRの「大畑駅」だったところらしい、廃線になって名称を変更したのだろう。
実は、ここ大畑は、つい最近までは大畑線(下北交通)が走っていたのだ。
以前にも北海道の「戸井町」(現、函館市)のところでも記したが、北海道と本州の最短距離にあるのは、戸井町と大間町である。
戦前、この区間に軍事的な目的を主に、国策として青函航路の代替航路を決定していた。
その為に北海道側は函館-戸井間、そして本州側はむつ市から大間を目指すべく、鉄道建設を急いでいた。 そんな中、1939年に下北―大畑間の路線が先ず開通したのであった。
しかし、戦局の悪化と戦争終了に伴い、大畑―大間の区間は放置、破棄されるに至り、結局この区間のみの短い路線となった。
時は流れ1981年に国鉄の合理化策として廃止を検討されるが、1985年7月に下北交通が後を引き継いだ。
その後も赤字体質は一向に改善せず下北交通大畑線は、2001年の3月31日を最後に廃止されるに至ったのだ。
下北交通は元々バスが本業であったため、自社によるバス代替運行に戻したのである。
大畑川沿いを上流へ行くほどに、深山幽谷の雰囲気が益々濃くなる。
進路を延ばすと、左に「恐山」(おそれさん)という方角の分岐があった。
どうやらこの辺りが薬研温泉といわれる地域らしいが、温泉街などという状況では全くなく、鬱蒼とした森の中にあっておよそ建物も見当たらない、
僅かに、一軒のホテルが右に見えてきた程度であり、旅荘が2~3軒といった秘湯の里であった。
目的地は未だ先のようで・・、更にその奥の奥薬研(おくやげん)へ向かう。
大畑川・薬研渓流に沿って2km程で、どうやら目的地の奥薬研温泉の「かっぱの湯」へ着いたようだ。
野放しのかなり広い駐車場があり、川岸への降り口に案内板があって坂を下りて行くと、渓流の岸に大きな露天風呂があった。
無論、混浴の広い天然温泉の露天風呂で、着替え用に御体裁の如くの小さな小屋があるのみ。
周りは鬱蒼とした緑と沢の音が一層雰囲気を出している。
中年のおじさんと若いカップルが一組・・(とはいっても女性は足湯三昧だが)が御入浴中だった。こちら老境のジジイは、委細構わず浸かるのであるが、露天風呂の底は緑色の藻が一面に張り付いていてすこし滑るが、実に何とも気持ちのいい自然湯である。
広い湯船は20人以上の人が入浴しててもゆったり浸かれるだろう。
すぐ下の渓流が清清しく、川からの風も心地よい、時間が経つのも忘れてしまいそうである。
気がつけば、浴槽の上流側で源泉が流れ込んでいるので結構熱いが、中程よりは快適であり、紅葉の時期は最高だろうな実感する・・!!、
この雰囲気だと泉質などはどうでもよい。
聞くところ、この湯は営林署管轄、管理しているとか。
混浴の「かっぱの湯」が恥ずかしい人には更に200mほど歩いたところに、土産物やレストランのあるログハウス風の建物に「夫婦かっぱの湯」があるらしい。
何でも、あちらはしっかりと男女別になっていて、一見売店で入浴料金を払わなければいけないの?と思ってしたが、実は、そちらも無料であるとのこと。
ヒバの原生林に囲まれた温泉で「薬研」の名は、湯の湧き出ているところが漢方薬を作る薬研という道具に似ていることから付けられたとされている。
「薬研渓谷」は新緑や紅葉の美しい景勝地でもある。この渓谷に沿って、否、渓谷の中に野天風呂はある、ここは 無論、男も女もない。
開湯の伝説は、「恐山」を開いた慈覚大師が、奥薬研を訪れた時にケガをしてしまって、川原で困っていると、フキの葉をかぶった河童が現れて大師を助けたという。
河童に運ばれ、奥薬研の湯に浸かり、気がついた時は傷は癒えていたという。
大師は感激して「河童の湯」と名付けたそうである。
伝説の河童は奥薬研のシンボルになり、河童の像が湯船の縁に座している。
泉質は無色透明の単純泉で、疲労回復、胃腸病、神経衰弱、婦人病、皮膚病、リウマチなどに効果があるとされている。
こちらはかつて、テレビ朝日の「ニュースステーション」と言う番組で、紅葉中継をしていた名所でもあり、1971年、 厚生省告示第55号により、国民保養温泉地に指定されている。
次回は「恐山」
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