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日本周遊紀行(111)いわき 「蛙の詩人・草野心平」
「いわき」を語る時、一人の偉大な人物がいた。
しかも、小生の大先輩でもあるから是非紹介しておきたい。
かえるの詩人・「草野心平」氏である。
『春の歌』 詩 草野 心平
かえるは、冬のあいだは土のなかにいて、春になると地上に出てきます。
そのはじめての日のうた。
ほっ まぶしいな
ほっ うれしいな
みずはつるつる
かぜはそよそよ
ケルルン クック
ああいいにおいだケルルン クック
ほっ いぬのふぐりがさいている
ほっ おおきなくもがうごいてくる
ケルルン クックケルルン クック
「かえるのシンペイ」は・1987年の文化勲章を受章している。
1931年、東京・麻布十番で焼鳥屋台「いわき」を開店した、
1952年、文京区に居酒屋「火の車」を開店、
1957年には新宿にバー「学校」を開いている。
かえるのシンペイは、やはりかえる同様、水に縁があったようだ。
それでも貧乏神はシンペイの元を去らず、未だ面識のなかった宮沢賢治あてに「コメ1ピョウタノム」と電報を打った。
賢治に電報を打ったのは、彼が農場を持っているのを知っていたのである。
この賢治のことをシンペイは、『 現在の日本詩壇に天才がいるとしたなら、私はその名誉ある天才は宮沢賢治だと言いたい。 世界の一流詩人に伍しても彼は断然異常な光を放っている。 彼の存在は私に力を与える(中略)、私は今只、世間ではほとんど無名に近い一人のすばらしい詩人の存在を大声で叫びたいのである。(中略)今後、彼はどんな仕事をしていくか、恐るべき彼の未来を想うのは私にとって恐ろしい悦びである。 宮沢賢治の芸術は世界の第一級の芸術の一つである 』と断言している。
そして、若き天才・宮沢賢治の死後まもない昭和8年、「日本詩壇」に載ったシンペイが送った追悼文の末尾に、『 最後に一言ドナラしてもらえるならば、日本の原始から未来への一つの貫かれた詩史線上の一つに、類まれなる大光芒が「宮沢賢治」であることはもう断じて誰の異義をもはさめない、一つのガンとした現実である 』と書いている。
宮沢賢治の偉大さと、又それを見抜いた草野心平の凄さがよく理解でき、草野心平はただ単なる「蛙の詩人」ではなく、彼こそ原始から未来への線上で大光芒を放つ詩人であり、世界に誇る哲学的詩人である。
宮沢賢治と並ぶ、もう一人の「東北人らしい感性豊かな人の代表」なのである。
「草野心平」はただ単なる「蛙の詩人」ではない、偉大なる「蛙の詩人」なのである。
詩集「第百階級」の扉には、四行の題詞が書かれている。
「蛙はでつかい自然の讃嘆者である」
「蛙はどぶ臭いプロレタリヤトである」
「蛙は明朗性なアナルシストである」
そして、『 蛾を食ふ蛙はそのことのみによつて蛇に食はれる。人間は誰にも殺されないことによつて人間を殺す、この定義は悪魔だ。蛙をみて人間に不信任状を出したい僕は、それ故にのみ“かへる”を慈しみ、嫉妬の如き憎む 』とある。
「かえる」は、自然の食物連鎖の中に組み込まれ、他の生物の食料になる可能性の中にいることが、他の生物を食料とすることの正当性がある。
人間は自然の枠外に出て、しかも食物連鎖の頂点に立つ。
もはや正当性はない。
互いに殺しあうことによってのみ、その正当性を無理やり見出す。
その幸、不幸を唱えるならば、悪夢を持たない「蛙」のなんと幸福なこと・・!!と、「蛙」を賛美しているのである。
草野心平は、1903年石城郡上小川(現いわき市小川)で生まれている。
兄も詩人で、心平に大きな影響を与えたという。
旧制磐城中学(現、磐城高校・・小生の大先輩)、慶応大学普通部の入・退学を繰り返し、中国に渡って嶺南大学(現、中山大学)で学ぶ。
帰国後、詩を書きながら貧窮の中で各地を転々としながら、編集者、記者、宣伝部員から貸本屋、焼鳥屋、居酒屋の経営まで手がけるが、商売上手ではなかったようである。
そんな中で、宮沢賢治と八木重吉(日本の詩人:明治31年、町田市相原町に生まれる、キリスト教徒、肺結核により29歳の若さで死去)を広く世に紹介し、高村光太郎との温かい友情は終生続いたという。
詩人としては、詩集「第百階級」「定本・蛙」などで評価を確立し、蛙を通して生命力への賛美と自然のエネルギーをうたう「蛙の詩人」と親しまれた。
それが縁で、隣の福島県川内村(天然記念物モリアオガエルの生息地)の名誉村民になって毎年村を訪れ、自分の蔵書を村に寄付しているという。
いわき市名誉市民、日本芸術院会員、文化功労者のほか、昭和62年には文化勲章受賞。 昭和63年(1988)11月12日、85歳で生涯を終えている。
次回は、勿来の関
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